不動車のメンテナンス(スバル360)

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この車は、昭和40年代の名車
スバル360、通称”てんとう虫”といいます。
排気量は360ccで2サイクルエンジンの
当時の軽自動車です

何年放置していたかは聞いていませんが、
当時は動いていた?らしいのですが、
屋外の草むらの上に放置されていて、エンジンはかからず
リヤのブレーキがロック(はりついた状態)して、
押す事も出来ませんでした。
車が車なので、みんなで車を引きずるようにしてようやく
うちの工場にたどり着きました・・・

放置するまでは、普通に動いていたそうで、
ブレーキのひきずりとエンジンがかかるようにだけ直して
くださいという指示でしたが・・・

今回の依頼は
”とりあえず動くように”という
内容なので、ボディー廻りは
作業しませんが、
表面はカビやコケがいっぱい
付いていて、あまりにも
みすぼらしい姿で・・・
あまりやりたくは
なかったのですが、今回は
スチームを全体にかける事
にしました・・・。
雨ざらしで、既に室内は
湿気だらけなので、今回は
どの分がスチームで入った
水分かが分かりませんが、
とりあえずですが、
表面はまあ見れるぐらいには
なりました。
室内は完全に”カビ”の臭い
でしたが、シートなど外せるパーツを
はずし、1週間ほど室内干しをして
臭いからは開放されました。

左と上の2枚は、スチーム後ですが
スチーム前は、とてもかわいそうな
姿だったので写真も
撮っていません。
スチームはかけましたが
塗膜はほぼ残りました。
メッキパーツは・・・。
最初からなのかも分かりませんが、
錆が浮いてきています。
写真では分かりにくいですが、
ボディーも・・・。
当時を見ていないので、
当時からなのか放置されて
出来たのかは分かりません。
トランクルームは、
草だらけで、まずは草むしりから
スタート

スペアタイヤの中にある1本が
絡み付いていて、手ではどうしても
取れませんでした・・・

エンジンルームは、
草はさほどなかったのですが、
砂などが凄かったです。

ここも今回は致し方なく
スチーム洗浄・・・

 

ある程度、汚れと草を
取り除いたので、
ようやく工場に入れて
作業開始です。

工場に入れるときに
分かったのですが、
ブレーキがスカスカ・・・ん?

オイルも入っていません??

当時乗っていたはずでは??

当時を知っている人もいないし
作業中は車検証も紛失していて
再発行中で詳細等が
一切分からず・・・

ブレーキのはりつきだけ直しても
結局ダメなので、急遽ブレーキも
ばらす事になりました・・・
 

原因はリヤのブレーキです。

ここが完全に固着していて
タイヤが全く動きません。

というよりドラム自体が
外れるかどうか・・・

うちに来るまでにも
トラックで引っぱってみたり
たたいたり、とにかくいろいろと
チャレンジしたそうです・・・

当時の構造で、とてもシンプルな構造
だから無理なことも
できないし、
パーツがもうないので壊す事は
絶対に出来ません

自分でもいろいろやってみましたが
結果は・・・同じデス
力では外れないので、
持久戦です・・・

とりあえずすき間というすき間から
オイルを吹きつけて、漬ける
ことにして暫く放置・・・


 

タイヤにドーナツのような
リムがありますが、これが
当時の”ホイール”です。
合わせホイールといいます。

残念ながら今みたいにインチアップ
とかデザインを選ぶ事は・・・できません

この構造は、今はもうありませんが、
ネジを外すと簡単にタイヤが取れる
ので、タイヤ交換とかパンク修理は
チェンジャーがなくても簡単に
自分でも出来るんです

この車の特長の一つ
”トーションバー”です。

今の車でいうとスプリング(ばね)部分です
(赤い部分)

当時のエンジニアが考えた
すばらしい技術です。

青い部分はハンドル部分になります。

 

自分もこの車を整備するのは
初めてで、大変勉強になりました。

当時の技術もそうですが、
きちんと整備できるような
構造になっていて、しかも
頑丈に出来ています。

メンテナンスフリーになってきている
今とは根本的に考え方が違います。

メンテナンスさえするば
ずうっと乗ることが出来そうです。

トランクルームです

今の車と違って床がありませんので、
モノを置くという事はできません。

床がないので、放置すると下から
草がどんどん絡みついてしまいます

フロントのサスペンションの
構造です。

コンパクトに出来た
画期的な構造です。

ばらして気付いたのがこちらデス

フロントのハブキャップ
(中央の丸いキャップ部分)

見た目には普通のハブキャップ
で、右側は普通なんですが・・・

左側のハブキャップには、
長い棒が付いていて、
先が割れています。

んん?
 

でもこの形はどこかで見たような・・・

入っていたところには
穴が・・・

裏側をのぞいて見ると・・・!!

”そういうことか♪”

なんとスピードメータのワイヤーが
きていました。

このキャップの回転でスピードメーターを
動かしていたんです。
あとで分かりましたが、この構造は
カウンタックと同じだそうです。

カウンタックと同じ技術がこの車には
反映されていたんですね。

 

 

ブレーキは、固着しているところ以外は、
とりあえず分解はできたので、ひとまずは
安心なので、エンジンをみてみることに
しました。

エンジンもプラグを焼いたりとか
いろいろとためして
やってみたそうですが・・・
ただ、セルは回るといっていました。

でも、うちに来たときの
エンジンルームは、砂だらけで・・・
”大丈夫かなぁ?”と思いつつ
まずはガソリンタンクを
チェックする事に・・・あれれ??
 

何と、ガソリンコックのパッキンが

ビニールテープ??

タンクの中はもしかして・・・
錆びだらけでは・・・??

慌ててタンクを覗きましたが、
多少のさびはありますが、
大事には至っていませんでした。

幸いにもパッキンが
ないに等しいので、通気性が良く、
湿気が溜まらなかったのが
錆びなかった原因かもしれません。

結果オーライですが、よかったです。

でも、これではエンジンがかかっても

タンクはだめになってしまうし、
洗車も出来ないので、

会社にあったゴムを加工して
パッキンの代わりにしました。
(何のものかは不明)

耐油性かどうかも分からないけど、
とりあえずないよりはましだろうと
思います。

はたしてこんな状態で、当時
乗れていたんでしょうか??

タンクの点検ついでに
ガソリンコックを分解してみようと
思いましたが・・・
固着しています。
フィルター部分はプラスチックなので、
割らないように、慎重に慎重に
外していきます。

他のパーツも何とかばらしてみると・・・

やっぱり・・・

中身は完全に固着していて

ガソリンが固形化して
”タール状”になっています。

 

当然、通路は完全に

ふさがっています。

これでは、エンジンがかかるわけが
ありません。

ホントに当時動いていたのか??
と思ってしまいます。

よくみると布のようなものが
あり、どうやらフィルターみたいです。

原形がないので、想像で考えるしか
ありません。

フィルターはなくてもガソリンが通れば
エンジンはかかりますが、タンクには
若干の錆があり、キャップも完全では
ないので・・・

何か対策をしないと・・・

フィルターの中は完全に
タール状のガソリンが詰まっていて、

パーツクリーナーでは溶けも
しません。

固形なので、ある程度割って
えぐり取っていきます。

ガソリンは古くなると

酸化、劣化などをして

成分が変化していきますが・・・

タール状になるには

はたして何年ぐらいかかるのでしょうか?

 

タンクの錆びもあると思うので、

余計に茶色く見えます。

フィルターから取り除いた

ガソリンです。

丸いのがどうやら

フィルター?らしい

当時エンジンがかかっていたとすれば、

エンジンがかからない原因は、
ガソリンコックだと思うが、
これはどう考えてもコックだけでは
なさそうなので、キャブも外して
みる事にしました・・・。

 

 

キャブを外したついでに
ポートから内部を簡易チェック!

この穴から見るかがりでは内部は
大丈夫そうです。

エンジンルームに堆積していた
ホコリは吸い込んではいないようです。

よく見ると、エンジンをばらした
跡がありました。

年式的に考えてもエンジンは
O/Hしていても不思議では
ありませんが・・・

やっぱりキャブは

メンテナンスのした跡が
ありません。

むしろ当時のままといったぐらいに
汚れいています。

スロットルは、
エンジンをかけるために
ガチャガチャと無理矢理
動かしたみたいなので、かなり渋い
ですが、動きました。
よく見てみると

確かこれは日立のマークでは・・・

このキャブは日立製なんだ。

当時は日立でもキャブを作っていたんだ

へぇ〜・・・

という事は、なおさら
パーツがないと言うことなので、
分解するのにも凄く神経を
使います。

パッキンは絶対に壊せないからです。

時間をかけながらじっくりと・・・

何とか無事にフロートのフタを
外す事が出来ました。

思っていたとおり、
キャブはO/Hした形跡は
ありません。

 

 

ジェットも軽症でしたが、

下のほうのジェットは詰まっていました。

キャブは見慣れているつもりですが、
いざばらしてみるとあちこちから
ジェットが・・・


基本構造は同じですが、当時は
ジェットを駆使して細かい制御を
していたのがよくわかり、
よい勉強になりました。

フロートも真鍮製なのは
よくわかりますが・・・

レバーがないんです。

筒の中に入っているだけの
構造なんです。

自分は始めてこの構造のキャブを
見ましたが、当時のキャブはこの方式も
多く採用されていたそうです。
古い欧州車に多いという事でした。

古いキャブのフロートは、
真鍮製が主流ですが、
欠点があります。

それは、真鍮製のフロートは
必ず”割れる”という事です。

これは材質と構造上
避けては通れません。

フロートの内部の空気が
膨張、収縮を繰り返し・・・
そして、エンジンの振動で・・・
やがてフロートが
耐えられなくなり・・・

このフロートも例外ではありません。

割れると、そこのヒビから
ガソリンが入り込み、フロートの
浮力を低下させて、適度な油面を
保てなくなります。

おそらくこの車も
エンジンがかかっていたとしても
調子はイマイチだったことが
考えられます

このフロートは、もうボロボロで
ほぼ全面にクラックが入っていました。

ガソリン抜き用??なのか

わかりませんが、1箇所ポッチが
あったので、そこに穴を開けて
内部に入ったガソリンを抜いていきます。

このフロートには、
コレだけのガソリンが
入り込んでいました
かなり予定外!の作業ですが、
ついでなので直します。

ヒビが入っている部分を全部
接合していきます。

ガソリンの中に入るものなので、
接着剤は使えません。

また、接合部を頑丈にしすぎて
フロートの自重が重くなってしまっても
直す意味がなくなってしまうので、

最低限の接合で、ガソリンが入らない
ように完璧に塞ぎます。
 

汚れの垢もいっぱい付いていたので

綺麗に落とします

 

実は、フロートはこんなに
綺麗だったんですよ!
接合跡
通常は、段差がないぐらいに
表面を削るのですが、

古いフロートで真鍮の肉厚自体が
かなり薄いものだったので、今回は
若干接合部を残しました。

フロートが完全に塞がったか
テストします。

バケツに水を入れて
沈めてみる・・・
何も起こらない・・・
OKです!

これでやっと
パーツが一つ
修理が終わりました・・・

フロートを修理している間に
漬けておいたガソリンコックと
キャブを全て洗浄します。
フロートより右側がガソリンコックの
パーツです
キャブ本体も洗浄して

目詰まりもなくなり

綺麗になりました

 

キャブ本体

 

赤いラベルは

スバルのマークです。

ガソリンコックのパッキン(左)が

壊れていたので、
ホームセンターを何軒か通い
代替品を探し(中央)

ついでにフィルターも作りました(右)

布製?のフィルターでは、
また、劣化してしまいそう
だったので

今回はステンレス製で製作

 
これでタンクからの
大きなゴミなどは
防げます。

 

そのかわり、ここにゴミが堆積するので、
定期的にコックの
点検が必要になると思います。
その後・・・
外したパーツを組み付けたあと、
点火系などを点検し、
無事にエンジンはかかりました。

機関も問題ないようで絶好調♪デス

かかった瞬間の状態を
HPに写真を載せようと
カメラを持ちましたが、
ものすごい強烈な”白煙”で、
工場の中が真っ白になり
車が完全に見えなくなってしまったので、
取れませんでした(笑)
今思うと、あの光景の方が
”かかったぁ”って感じで
よかったかも・・・

ただ、クラッチもはりついていました・・・

勿論直しましたが・・・

 

これでようやく本題の
リヤドラムの固着を・・・

数日間オイル漬けにしてあったし、
エンジンもかかったので
あとは”ブレーキ”が直れば
乗れるぞ!

と気合を入れてやりましたが・・・

ピクリともしません・・・??。

部品を交換できるのが前提であれば
荒療治でいろいろな方法が考えられるの
ですが、今回はそれが全く
出来ません。

”これはまいったなぁ・・・”と
思いながら、あきらめずにオイルを
吹き付けてはじっくりと
負荷をかけていく事数日・・・

ようやく”ピキ”といいながら
動きだしました。

あとは、これの繰り返しをして、
ピキと動いてから更に数日後・・・


 

 

無事に部品の破損もなく
ドラムが外れました

 

中は、錆といろんなゴミのカスが
詰まっていました。
オイルで漬け込んでようやく
ふやけてきて・・・外れた

という感じです

分解が出来たので、あとはこれらの
パーツを洗浄して組めば・・・

あっ・・・!
オイルが入っていなかったんだ・・・

洗浄しながら、各パーツのオイル漏れ
をチェック・・・
汚すぎてどれが原因か分からないし
それにホイールシリンダには
オイルが残っている・・・?

という事で、ブレーキの
マスターシリンダをチェック・・・

あやしい・・・

ブレーキオイルが漏れた跡が・・・
でもこれは今回なのか、
前からなのか・・・?
わかりません・・・

よくみてみると
プレッシャースイッチが・・・

ブレーキランプのスイッチは
マスターの油圧を利用していたんです。

実は、エンジンなどを触る前に
電装系のチェックをした際、
ブレーキランプだけが点灯
しなかったんです。

ブレーキは分解するからその時に
一緒に点検すればいいかなと
思っていたんです・・・

この構造も古い欧州車に
よくあるということが分かりました。

でも、どうもこの辺があやしい・・・

結局、どこが悪いという
原因が特定出来ないので、
全部O/Hする事に・・・

本来であればカップなどといった
消耗品を交換したいんですが、
部品がないので・・・

 

 

ホイールシリンダも当時のなのか
交換してあるのかもわからず・・・

ブレーキパイプも片側はミリで、
もう片方はインチでした。

専門ショップではないので、
詳しい事が分かりません。

とりあえず今あるパーツを
全て元に戻すという考えで
O/Hを開始・・・

本体に記載がある
カップのサイズを頼りに
だめもとで、ネットで
カップキットをそれぞれ購入
してみましたが・・・
残念ながら合いませんでした。

一番あやしいマスターだけでも部品を
と思っていろいろ調べて
マスターのO/Hキットも
購入してみましたが・・・

見た目は一緒なんですが・・・
やっぱりサイズが合いませんでした。

残念ですが、やはり全て
元に戻すしかないようです。
でもそれではオイル漏れが
直らないかも・・・
仕方ないけどやるしかないので
チャレンジします

よく見てみると・・・
全てのシリンダが
本来であればASSYで
交換しないといけないぐらいに
中はグチャグチャに
固着していました・・・。

仕方なく、何とかカップを傷めずに
慎重に分解し・・・

オイルを吸って伸びきった
カップを溶剤を飛ばして
何とかもとのサイズに
戻して・・・

やっと何とか使えるようにまで
O/Hしました。

原因は、この段階では
まだ分かりませんが、
カップなどに異常はなく、
どうやらリザーブタンクから
マスターシリンダに
繋がっているホースと
プレッシャースイッチ付近から
漏れていたかもしれません・・・
 

ブレーキマスターを固定する
ボルトも錆びだらけだったので

磨いて、綺麗に・・・

左が磨き後、
右が磨き前になります。

そして各パーツをつけて
エアー抜きをしてみると・・・

右のフロントだけ
エアー抜きが出来ません??
分解してみると右フロントの
ブレーキホースが
詰まっていました・・・

こちらも壊さないように
時間をかけて慎重に直し・・・

もう一回
エアー抜きをしてみると・・・
きちんとペダルに踏力が
出てきて・・・

やっとブレーキが効くように
なりました♪

サイドブレーキもワイヤーに
給油をしたので、
引きずりもなく・・・OKです。

やはりオイル漏れは
リザーブタンクのホースと
プレッシャースイッチと
思われますが、暫くこの状態で
乗っていただいて、
後日あらためて点検を
した方がよいかもしれませんね。

赤い矢印の部品

何か分かりますか?

実は、これはヒーター用の
モーターなんです。

エンジンが空冷でラジエータ液が
ないので、ヒーターの熱は、
マフラーの熱を利用しています。

これは、ポルシェやワーゲンのような
空冷車と同じです。

マフラーの熱を利用しているので、
マフラーが排気漏れをしていると・・・

大変な事になります(笑)

ちなみにこの棒は、
リヤのサスペンション

”トーションバー”になります。

ヒーターの熱は後ろから来るので、

吹き出し口は後ろから前に
向かっています。

ヒーターの切り替えレバーです。
ここで、室内と
デフロスター(ガラス)を

切り替えます

この車のもう一つの特徴

”前開き”のドアです

ここにも小窓があります。
ここは室内に空気を入れる窓で、

走っている時に開けると、
気持ちいい風が入ってきます。

夏に開けると、エアコンがなくても
気持ちいい風が入ってきます。

最後に気になっていた

トランクルームのヒンジを

ついでに直します。

最初の状態が

分かりませんが、

開閉時にひっかかり

あきらかにおかしいデス

 

最初の状態が

分からないので

構造で判断して

修正します

左右対称に

曲げ直しましたが

左右対称より

ちょっとずらした方が

しっくりきたので、

ちょっと修正し・・・

スムーズに

開閉できるようになりました。

車検証や詳しい情報が

一切ない状態で作業して、

また、交換したいパーツも

たくさんありましたが、

”とりあえず動くように”

というところまでいったので、

中途半端な状態ですが、

今回のメンテナンスは

ここで終了です。

ちょっと試運転をしましたが、
スピードや乗り心地は今の車に比べれば
はるかに劣りますが、昔の車はやっぱり
雰囲気があって乗っていて楽しいです♪
ギアも1速はシンクロがないのかな?
昔のアルファみたいに乗るにも
コツがあって、とっても面白いと思います。
古い車(旧車)は、お金があれば
買えるというもではありませんので、
これからは、大事に乗って
もらえればなぁと思います。

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